Blood†Tear
新緑の木々が生い茂る森の中を、小鳥達の囀りに耳を傾けながら歩くレオン。
暖かな木漏れ日を浴び暢気に伸びをするが、彼の耳は何かをとらえ反応する。
地を蹴り飛躍すると近くの木の陰に身を隠す。
ヒュッと音を立て、何処からか放たれた矢が彼の後を追うように地に突き刺さった。
敵の位置を探る為、そっと顔を出し様子を伺うが、その瞬間一本の矢が木の幹に突き刺さり、更に続けて飛んできた矢が彼の頬を掠め地に落ちる。
「っ……」
再び身を隠した彼は頬を伝う血を拭うと息を吐く。
だが、その間にも敵は弓を引き続け、身を隠す彼を狙って矢は放たれる。
飛んできた矢を交わす為、地を転がり高く飛躍、降りしきる矢を俊敏な動きで回避する。
只ひたすら逃げているという訳ではなく、彼は敵の居場所を探りながら森の中を駆けていた。
接近戦を得意とするレオンには、敵との接触も出来ず相手のみが遠くから攻撃を仕掛けてくる今の状態では分が悪い。
遠隔戦を得意とするこの敵は接近戦には弱いする筈。
一気に敵の懐に潜り込み、遠くに逃がす前に接近戦に持ち込むのが得策。
そうと分かればすぐさま実行に移すのみ。
敵の居場所を把握した彼は木々の間をすり抜け駆けて行く。
彼の行く先を詠み矢は放たれるが、尋常ではない彼の速さにはついて行けない。
何本矢が放たれようと、それが標的に命中する事はない。
太い木の枝を両手で掴むと、逆上がりの要領で回転し器用に枝の上に着地した。
一気に敵との距離を縮めようと枝を蹴るが、一瞬目の前が眩み足下がふらつく。
何も掴む物が無く、足を滑らせるとそのまま落下。
「…っててて……何だ……?」
背中を強打し顔を歪める彼は頭をかきながら考える。
「…毒、か……?」
地に刺さる矢を目にした彼は頬の傷を思い出し、独り呟くと一度目を瞑りゆっくりと深呼吸をした。