Blood†Tear
人通りの少ない町中を、誰かを捜すようにして歩くジーク。
彼は、突如目の前から消えたシェイラの姿を捜していた。
ほんの少し目を放し、彼女の元から離れた時だった。
其処に座り、1人の女性と仲良く話をしていた筈の彼女。
その彼女の姿が女性と共に突如消え、行方を見失ってしまったのだ。
「…シェイラ……一体何処に……」
立ち止まった彼は壁に背を預け、眉間に皺を寄せ呟いた。
頭を抱える彼の耳に、不意に入ってきた鈴の音色。
その音に顔を上げた彼は、前方を鋭く睨んだ。
「決着をつけに来てやったよ、この死に損ない!」
声をあげるのは、黒髪を1つに揺った巫女装束の少女、ナギ。
彼女が何か言い終わると同時にジークを覆う黒い影。
ナギと瓜二つの顔をしたもう1人の少女、カンナが、屋根の上から薙刀を手に飛び降りてきた。
ジークに向かって薙刀を振り下ろすカンナ。
しかしその厚い刃は彼には当たらず、地に突き刺さり深く地をえぐる。
「残念ながら、貴女達の相手をしている暇はないんです」
たった一歩足を動かしただけで攻撃を交わした彼は、刃を地から引き抜く前に柄を掴むと、その柄で彼女の鳩尾を付き、怯んだ所で突き飛ばす。
「カンナ姉!」
「…大丈夫……平気だよ……」
突き飛ばされたカンナを受け止めるナギ。
カンナは心配いらないと微笑み、2人は薙刀を構えるとジークを睨んだ。
「手加減する気はありません。本気でいきますよ」
ジークは鞘から刀を抜き、両手で柄を握ると片足を退く。
鋭い紺の瞳で2人の姿をとらえると、静かに息を吐き力強く地を蹴った。