Blood†Tear

一気に距離を縮め刀を振り下ろすジーク。


その刃を薙刀の柄でカンナは受け止め、ナギはジークの背後に回り込む。


素早く薙刀を振り下ろすが、既に彼の姿は其処には無く、刃はカンナに当たりそうになる。




 「くっ……」


ナギは咄嗟に刃の軌道を反らし、カンナに怪我を負わせるのを防ぐとバランスを崩してしまう。


そんな彼女の背後にジークは姿を現し、何の迷いも無く刀を振り下ろす。


が、その刃は2人の間に割って入ったカンナによって弾かれた。


カンナは攻撃を防ぐと彼の空いた懐を狙い薙刀を突き出す。


完璧に当たる攻撃とは言えないが、確実に傷を負わせる事ができる。


その筈だった。


しかし…




 「…え……?…ぐはっ……!」


感じない手応え。
軽くなった薙刀。
宙を舞う厚い刃。


地に突き刺さった刃を見つめた後、刃の無い薙刀に目を移す。


驚きの声をあげ、目を見開いたカンナの身体に走る激痛。


何時の間にか身体を斬られた彼女はジークに突き飛ばされ、大木に身をぶつけ血を吐いた。




 「カンナ姉!!くっ……貴様ー!!」


ナギは柄を握ると薙刀を振るう。

それを難なく交わしたジークは素早く刀を突き出す。


身を捻ったナギはそれを交わすが、完全には避けきれず腹部を掠る。




 「っ……糞っ……」


彼女は薙刀を力の限り振り下ろすと彼から離れ、カンナの元へと移動した。




 「カンナ姉……」


 「…ごめん…ナギちゃん……」

ナギは赤く染まった横腹を押さえ、荒い息をするカンナの隣に膝を折る。


カンナの傷に顔を歪めたナギは、歩み寄ってくるジークを睨むと薙刀を投げつけた。




 「…カンナ姉、少し、休もう……」


ナギはちいさく呟くとカンナを抱き締め、柔らかく微笑むと彼女と唇を合わせた。



ジークは飛んできた薙刀を払いのける。

すると、突如吹き荒れた突風。

顔の前に腕をかざし目を細めそれに耐える。



風が止んだかと思うと、リンと響く鈴の音。


腕を除け前方を見やれば、其処に居たのは2人の少女ではなく、1人の女性が立っていた。





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