Blood†Tear
両手で柄を握ったカンナギは上段に刀を構え、ジークは鋭い目つきで彼女を見据え切っ先を向ける。
暫くの間、どちらも動きを見せる事はない。
互いに睨み合い、距離を縮める事なく相手の出方を伺っていた。
一方が右に動けば、もう一方も右へと動き、どちらかが一歩前へ踏み出せば、どちらかが一歩後退する。
先に攻撃を仕掛けるが勝ちか、迎え撃つが吉か。
互いに駆け引きを繰り広げる中、スッと草履を擦り左足を退いたのはカンナギ。
グッと柄を握り締めると力強く地を蹴り一気に距離を縮める。
飛躍し頭上に現れた彼女。
上段に構えていた刀を素早く振り下ろす。
ジークは慌てた様子も見せる事なく、交わそうとはせずに刀を振り上げた。
鋼同士のぶつかる音が鳴り響く。
刃を受け止めた彼だが、避けなかった為斬撃が彼を斬りつける。
刀を振り下ろした彼女の口元は綻ぶが、見上げる彼の口元も笑っていた。
「っ…何っ……!?」
肩から、腕から、頬から散る鮮血。
その鮮血は彼ではなく、彼女から流れたもの。
目を見開く彼女は一旦退き距離を取る。
浅い傷ではあるが、確かに傷を負っていた。
刃は確実に何処にも触れていない。
と言う事は、彼は斬撃を斬り、ましてや跳ね返したというのか?
この短時間で打開策を練り、尚且つ実行に移しこの攻撃を防ぐとは、思ったよりも手強い相手のようだ。
頬の血を拭い彼を睨む彼女は、腰に刺す二口の妖刀に手を伸ばす。
しかし、指先が触れた瞬間我に返りその手を離した。
「使わないのですか?鈴狂と言うその妖刀を」
「私は護り巫女。その私が、妖刀に狂う訳にはいきません」
妖刀から目をそらす彼女の回答。
その答えに疑問を抱いたジークは目を細めた。