Blood†Tear
抱き締められたアリューは何をされようと抵抗しない。
虚ろな瞳で遠くを見つめ顔色1つ変える事もなかった。
「ライアから君を殺せって言われてさ。やっと研究に没頭できると思ったらこれだよ。ついてない」
「俺達が邪魔になったと言う事か」
「さぁね」
マットは短く返すとアリューの耳元で何かを囁く。
腕を解かれ解放されたアリューは虚ろな瞳でレグルを捕らえ、力強く地を蹴った。
迎え撃つレグルは被っていた帽子を投げ捨てる。
宙を舞い視界を遮るその帽子をアリューは払いのけ更に彼との距離を縮めようとするが、視界が開けた瞬間飛んできた銃弾。
咄嗟に身を捻りそれを交わすと、次いで来た銃弾を弾き落とす。
「チッ……」
銃弾を全て交わされレグルは舌打ちをすると振るわれた刃を一歩後退し身をそらしながら交わす。
目の前を通過した刃は風に靡いた彼の金髪に触れ数本が宙を舞う。
自分の胸へ向けられた銃口を左手で弾くアリューは空を斬った刃を心臓目掛けて突き出した。
「っと……」
それを身を翻し交わしたレグルはアリューの後ろに回り込み、彼女の後頭部に銃口を向け引き金を引いた。
銃声が鳴り響くが、それは建物の屋上にある看板にめり込んだ。
銃声を向けられたアリューは振り向きもせず、左手を後ろに回し銃を掴むと銃口をそらしたのだ。
そして彼女は銃を掴んだまま彼を力の限り投げ飛ばす。
驚いていたレグルは抵抗出来ず、壁に背をぶつけ苦痛に顔を歪める。
考える隙さえ与えず、彼の前に立つアリューは刃を引き突き出す。
瞬時に反応したレグルは彼女の腹を蹴りそれを回避。
尻餅をつく彼女へ銃を放つが、彼女はその体勢から片足を振り上げ銃を蹴り上げる。
「くっ……」
銃は宙に舞いレグルは顔を歪めると、もう片方の銃の引き金を引く。
しかし、それすらも交わされレグルは地に転がった銃を掴みながら彼女との距離を取った。