Blood†Tear
「君の攻撃パターンは分析済み。アリューにはその情報を叩き込んでいるから、君の攻撃は効かないよ」
そう言う事か。
だから彼女はこちらの攻撃を全て交わしていたのか。
だとすれば分が悪い。
どう反撃に出ようと、全てが見切られている為安易な行動は取れない訳だ。
「厄介だな……」
1人呟くレグルはアリューの攻撃を交わしながら考える。
ヒュッと風を斬り振り下ろされた刃を目で追い引き金を引く。
数発の銃声が鳴り響くが、それは全て弾かれ交わされる。
銃弾を交わしたアリューは傍にあった木箱を手に取り投げつける。
そして隙の出来た彼の懐に潜り込むと、彼が木箱に気を取られ己の存在に気づく前に素早く刃を振り上げた。
「っ……!」
飛んできた木箱を身に受けたレグルは、刃を振り上げるアリューの存在に気づくと地を蹴り後ろへ飛躍。
完璧には避けきれず右腹部を負傷したレグルは反射的に銃を放つがそれも簡単に交わされてしまう。
後を追うように地を蹴ったアリューは刃を振り上げ更に攻撃を仕掛けようとするが、何かに気づきその足を止めた。
そして方向転換するとレグルにではなく、マットに向かって駆け出す。
何事だと眉を潜めるマットは自分の顔に陰が差したのに気づき見上げると、頭上から木材が降って来るのが目に入った。
「ワァオ……」
作業中の建物に吊されていた木材の縄に銃弾が掠り、縄が切れ支えを失ったそれは落ちてくる。
彼は何か呟くが其処から一歩も動こうとはせず、ギリギリの所で駆けつけたアリューによって救われた。
「痛たたた……あれ……?」
突き飛ばされ尻餅をつくマットは腰をさすりながら立ち上がると、前方を見やり首を傾げる。
と言うのも、其処に居る筈のレグルの姿が何処にも無いのだ。
「隠れん坊かい?ラグナレア国の王子様……」
眼鏡を押し上げそう言うと、彼はアリューの名を呼んだ。
すると木材の下敷きになっていた彼女は姿を現し、虚ろな瞳を彼へと向け首を傾げた。