Blood†Tear

レグルは奥歯を噛み締め怒りに耐える。


どんな表情をしているのか分からない。

でも多分、酷く醜い顔をしているのだろう。




 「…お前にとって彼女達は何なんだ……」


 「?」


 「…お前は、彼女達を何だと思っている……」


 「何って、何でもないよ。これは只の道具。人の形をした玩具。がらくたも同然なのだから、不要となれば廃棄する。それは当たり前の事だろ?」


低い声で問うレグルの言葉に答えるマットは嫌味に笑いながら目を細める。




 「もしかして、まだ根に持ってる?あのホムンクルスの……っと……」


ヒュッと目の前を通過する鋭い刃。

咄嗟に身を引くが完全には避けきれず、頬を赤い血が伝って行った。



怒りを露わに剣を振るうレグルの表情は鬼の形相。


煌めく刃が振り下ろされる前にマットはいつの間にか手にしていた試験管から栓を抜き、中の液体をレグルにぶちまけた。




 「っ……!」


反射的に顔の前にかざした腕にかかるその液体。

それは服を溶かし腕を焼く。



レグルが怯んだその隙にマットは回復したアリューの背を押しレグルを殺せと命令する。


しかし、彼女は一歩前へ出ただけでレグルに斬りかかろうとはしない…




 「…何して……グハッ……!?」


様子のおかしい彼女に声をかけるが、名を呼ぶ手前で腹部に鋭い痛みが走り血を吐いた。


体を貫通する刃。
背にある刃先から血が滴り落ち、白衣は真っ赤に染まっていく。


立ち止まっていたアリューは、振り返ると共にマットの腹部に刃を突き刺していたのだ。




 「っ…貴様ーー!!」


アリューを突き飛ばし刃を腹から抜くと怒りを露わに声を荒げる。

そして彼女の髪を乱暴に掴み引き寄せると、ポケットから取り出したメスを振り上げた。





< 269 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop