Blood†Tear
鎌を振るい短剣を弾くクレアだが、全てを交わす事は不可能。
怪我を負わない所など無いにも関わらず、短剣は負ったばかりの傷を更に深くえぐり突き刺さる。
「くっ……ハァ…ハァ……」
降り注いでいた短剣は突然止み、地に刺した鎌で身体を支えるクレアは肩で息をする。
血を吐き乱暴に唇を拭うと、前方のフリードを霞む視界の中に映す。
「…クレア、俺は……」
握られていた短剣はその手から滑り落ちる。
小さく呟く彼からは、何の殺意も感じられなかった。
そんな彼を見つめるクレアは、右手に縛りつけていた鎌を消し歩み寄る。
「…何時も…何時も貴方は私を殺さなかった……貴方程の力なら、私を確実に仕留められる……なのに貴方は私を殺さない……」
脚がもつれ転びそうになりながらも、彼女は一歩ずつ着実にフリードとの距離を縮める。
荒い息を吐き、苦痛に耐え無理をしながら。
「何時も疑問だった……何故とどめをささないのか……何故生かしておくのか……何故命を奪わないのか………でも、やっと気づいた……全ては私が悪いのだと……私が間違っていたのだと……」
その言葉にフリードは顔をあげ、直ぐ其処までやってきていた彼女を怪訝な顔で見つめた。
「同じ血を引く者同士、命を奪い合うなど虚しいだけ……なのに私は貴方を殺そうとしていた……何処に向けて良いか分からぬ怒りを、同族である貴方へ向ける事で紛らわしていたんだ……私は馬鹿だ…貴方の存在を、私が生きる全ての言い訳にしていたのだから……」
彼の前にたどり着いた彼女の身体はフラリと揺れた。
反射的に手を伸ばし彼女を受け止めるが、肩に添えたその手を離してしまう。
支えを失いバランスを崩した彼女は自分独りでは立って居られず、そのまま彼にもたれかかり身を預ける状態となった。