Blood†Tear

 「2人はまだ戻っていないようですね」


レグルの治療が済んだ頃、声を上げたのはジーク。


辺りを見回していた彼は膝を折るシェイラに手を差し伸べる。




 「コウガさんとレオンさんですね。お2人共、無事だと良いのですが」


 「彼等なら心配ないだろう。きっと直ぐに戻ってくるさ」


ジークの手を借り立ち上がったシェイラは心配そうな面持ちで胸の前に両手を組む。


そんな彼女を安心させるように言うレグルは優しく微笑むと彼女の頭をそっと撫でた。


頭に添えられた大きな手にシェイラの頬は仄かなピンク色に染まる。


その様子を傍で見ていたジークは面白く無さそうにへの字に口を下げ、シェイラに優しくするレグルに冷めたい視線を送るのだった。




 「そろそろ中へ入りましょう。此処で立ち話も何ですし、彼女をこのまま放っておく訳にもいきませんから」


にこやかに言うジークはシェイラの腕を掴み自分に引き寄せる。


腕を引かれたシェイラは驚きジークを見上げ、レグルは笑みを消し彼へと視線を移す。



レグルから離す事に成功したジークは、頭を撫でる右手を挙げたままの彼へと舌を出す。


そしてシェイラの腕を引き宿の中へと姿を消した。




 「……」


挙げた状態のままだった右手を頭の後ろに回し無言で首をかく。


そして未だ目を開ける事の無いクレアを見下ろすと彼女へと手を伸ばす。


身体を動かしても起きない彼女を抱えると、ジークとシェイラの後を追い宿の中へ足を進めた。





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