Blood†Tear

人々の寝静まる真夜中に、何処からか響き渡る賑やかな音楽。


パイプオルガンの独特なその音色は、ある町に佇む古びた教会から漏れ出ていた。



灯りの点らぬ教会の中、ステンドグラスは月明かりに照らされて、床には其処に描かれる模様が綺麗に浮かび上がる。



手慣れた様子でオルガンの鍵盤を叩くのはライア。

表情を見る事はできないが、とても活き活きとした雰囲気のように思われる。




 「…何処か楽しそうに見えるのは気のせいか?」


ライアに問い掛けたのはスティング。

長椅子に腰掛けライアの様子を見守っていたのだが、疑問を抱き目を細める。




 「さぁどうだろう?気のせいかな?それとも事実?」


何が可笑しいのかクスクスと笑って見せるライア。


彼のその態度にスティングは苛立ちを覚え初めていた。




 「お前、今の状況がわかっているのか?」


 「?」


 「マットとティムが死んでいるんだぞ。エルウィンやカンナギ、フリードは姿をくらましている。この状況で笑っていられるなど、不謹慎すぎるにも程があるとは思わないのか」


もっともな意見。
筋が通っている。

彼の意見は正しい。


共に行動を起こしてきた者が死んでいると言うのにこの態度。


楽しそうにはしゃぐ今の彼の様子は、言動も行動も何もかも全てが不適切である。




 「別にどうだって良いよ。彼等は只の駒でしかないのだから、誰が死のうが誰が消えようが関係無い。不要となれば切り捨てるつもりだったし、何れにせよ彼等は死ぬ運命だった。その日がほんの少しばかり早まっただけだよ」


オルガンの蓋を閉じたライアは伸びをしながら立ち上がる。


座っていた古びた椅子はギシリと軋み、静かになった教会の中不気味に響いた。






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