Blood†Tear

 「あれ?コウガは?」


辺りを見回すレオンは、この部屋の中にコウガの姿がない事に気づく。




 「言われてみれば、昨晩から姿を見てないな」


 「私はてっきり、貴方と一緒に居るものだと」


コウガの居場所を知らない様子のジークとレグル。

紅茶を飲み終えたシェイラも首を傾げる。




 「何処に行ったんだ、彼奴……」


腕を組み考えるレオンの瞳には、スプーンをくわえたまま固まるクレアの姿が目に入った。




昨晩偶然コウガと出会している彼女。

言葉を交わした訳ではない。

只彼の傍に居て、彼に身を任せていただけ。


何も言わず何も聞かず、只じっと彼に寄り添った。


様子のおかしな彼だったが、結局は何も知る事のできぬまま。


悲しそうな瞳をした彼はあの日、真意を伝える事無く立ち去り、彼女の前から姿を消した。




 「おいお前、何か知ってるだろ?」


 「…さぁ……」


ぼうっとするクレアを不審に思ったレオンは問いかけるが、彼女は短く否定の意を返すと目をそらす。




 「誤魔化すんじゃ――」


 「俺は知ってるぞ。彼の居場所を」


 「「!?」」


苛立ちを覚え始めたレオンの言葉を遮る声に、一同部屋の入り口へと目を向ける。


其処には黒いローブを身に纏う、右頬にある大きな傷痕が印象的な男性が扉を背にして立っていた。





< 298 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop