Blood†Tear
「あれ?コウガは?」
辺りを見回すレオンは、この部屋の中にコウガの姿がない事に気づく。
「言われてみれば、昨晩から姿を見てないな」
「私はてっきり、貴方と一緒に居るものだと」
コウガの居場所を知らない様子のジークとレグル。
紅茶を飲み終えたシェイラも首を傾げる。
「何処に行ったんだ、彼奴……」
腕を組み考えるレオンの瞳には、スプーンをくわえたまま固まるクレアの姿が目に入った。
昨晩偶然コウガと出会している彼女。
言葉を交わした訳ではない。
只彼の傍に居て、彼に身を任せていただけ。
何も言わず何も聞かず、只じっと彼に寄り添った。
様子のおかしな彼だったが、結局は何も知る事のできぬまま。
悲しそうな瞳をした彼はあの日、真意を伝える事無く立ち去り、彼女の前から姿を消した。
「おいお前、何か知ってるだろ?」
「…さぁ……」
ぼうっとするクレアを不審に思ったレオンは問いかけるが、彼女は短く否定の意を返すと目をそらす。
「誤魔化すんじゃ――」
「俺は知ってるぞ。彼の居場所を」
「「!?」」
苛立ちを覚え始めたレオンの言葉を遮る声に、一同部屋の入り口へと目を向ける。
其処には黒いローブを身に纏う、右頬にある大きな傷痕が印象的な男性が扉を背にして立っていた。