Blood†Tear

目指すは、丘の上にある小さな教会。

決して立派とは言えないが、何十年とそこに佇んでいる。

周りには色とりどりの花々が咲き誇り、風に吹かれて小さく揺れていた。


その花々の傍に女性が１人。



　「アリア」


　「…コウガ」


女性の姿を見つけると、彼は彼女の名を呼んだ。

名を呼ばれた女性は振り返ると、見慣れた男性を目にし優しく微笑む。



彼女の名はアリア=ダージェス。

腰までの長い黒髪に、優しそうな藍色の瞳を持つ女性。


彼も微笑むと、手にしていた果物を彼女に投げ渡した。

突然飛んできた物を驚きながらも何とか受け取ると、疑問符を頭に浮かべる。




　「これは？」

　「ポポルさんから貰ったんだ。」

　「…そう……」


ありがとう。いつもならその言葉が返ってくる。

だが、果物を見つめる彼女は何故か悲しそうな顔をしていて…




　「！？アリア？」


疑問に思い眉を潜め、声をかけようと口を開いた時だった。
彼女は突然彼の胸へ飛び込んで来たのだ。

何があったのか、彼女の肩に手を乗せ顔色を伺おうとするが、彼女は離れようとはしない。



　「どうした、アリア？」

　「……」

優しく声をかけるが反応はない。
どうしたらいいのかわからず、そのままの状態でいると、




　「……コウガ……」

　「？」


彼女は小さな声で彼の名を呼ぶ。

優しく見つめると、彼女は言葉を続けた。



　「……コウガは…コウガだけは、私の見方、だよね…？」


　「見方………あぁ、俺はアリアの見方だ」


彼女の問いの意図がわからいが、彼女を落ち着かせる為そう答えた。

すると彼女は彼の胸の服を更に力強く握り締め、顔を埋める。



　「……約束、だよ……？」

　「あぁ……」


弱々しく囁く彼女の言葉に頷くと、彼は彼女の背に腕を回し、優しく抱きしめた。



赤い果物は地に転がり潰れ、無惨な姿になっていた。

静かだった風は強さを増し、草花を大きく揺らす。

先程まで澄んでいた空は怪しい雲に覆われ、今にも泣き出しそうだった…