Blood†Tear
三人掛けソファーの上、ふてくされて寝ころぶレオンは頭にできた瘤に氷を当てる。
暖かい湯気のたつティーカップを手にするレグルとシェイラ。
2人の向かいに座るスティングに、紅茶を注いだティーカップをジークは乱暴に差し出した。
「それでは、お話と言うのをお聞かせ頂けますか?」
「いっ…っ……!」
ジークの目に余るその態度に呆れ、シェイラは溜め息を吐くと彼を隣に座らせる。
そしてににこやかに微笑みながら気づかれぬよう彼の太股を抓るのだった。
「わからないんだ。何が正しくて、何が間違っているのかが。何を信じ何を疑うべきなのか、何もかもがわからない……」
右手を額に添え頭を抱えるスティングは、深く重い溜め息を吐く。
そんな彼を見つめるレグルは、優雅に珈琲を口に運びながら不思議そうに目を細めた。
「本当に、ライアがやろうとしている事は正しいのか、彼の言っている事が正義なのか。俺は彼の味方に、彼の一番の理解者になるべきなのに、彼を信じる事のできない自分がいる……
俺はどうしたらいいのかがわからない。彼とは異なる考えを持つ、お前達の意見を訊かせてはくれないか?」
「何が正義で何が悪かなんて、誰にも分かりはしませんよ」
机の上に肘をつき握った手の甲に顎を乗せるジークはぼそりと呟きスコーンにかぶりつく。
「ジークの言うとおり、敵対する俺達の内どちらが正しいかなど断言する事はできない。この世界を変えようとする君達は、見ようによっては正義なのだから」
立ち上がり窓辺へと歩くレグルは外を眺めながら言葉を続ける。
「しかし俺達は、力を持ってこの世界を征そうとする君達が正しいとは決して思えない。君達の考えは間違っているともそう思う」
「貴方と彼がどのような関係かは知りませんが、貴方にとって彼はとても大切な存在なのでしょう。そんな彼が間違っているとそう思うのでしたら、貴方自身が彼を正しき道へと導くべきだと、私はそう思いますよ」
優しく声をかけ柔らかく微笑むシェイラ。
3人の話を聞くスティングは、何か考えるように無言でティーカップの中を見つめていた。