Blood†Tear
「ククッ……フハハハハッ……!アーハッハッハッ!」
古びた教会の中、響く高笑いはライアのもの。
コウガに顔を近づけていた彼は突然腹を抱え笑い出す。
「無理だよねぇ?無理に決まってる。君がこの身体を傷つける事なんてそんな事、できる訳が――」
ニヤつく彼は突き飛ばされ、長椅子にその身をぶつけ倒れ込む。
彼に手を出したのはコウガ。
怒りを露わにする彼は力強く握り締めた剣を振り上げる。
「…痛いよコウガ……何するの……?」
「っ……!」
身を起こしたライアの発した声はアリアのもの。
向けられた潤んだ瞳にコウガは目を見開き動きを止める。
その姿に口の端を吊り上げたライアは転がるレイピアを素早く振り上げ、コウガの握る剣をその手から払いのけると彼の襟を掴み自分に引き寄せ微笑んだ。
そして彼は何も言わないコウガを押し倒し、仰向けに倒れた彼のその上に乗ると両手を顔の横につき見下ろした。
「君を殺さないのは、彼女がそれを望まなかったから。君に手を出さない事が彼女との約束だったけど、その当事者である彼女が今現在居ない以上、その約束を守り続ける必要は無いと言う訳。僕の言わんとしている事、わかるよね?」
「…俺を殺す気か……」
「そう、今の僕には直ぐにでも君の命を奪う事ができる。君のその心臓を貫く事だって、身体の部位を1つずつ切り取って痛みを味わせる事だってできるんだ。君の返答次第ではね」
「返答……?」
彼の言葉に疑問を抱き、見上げるコウガは眉を潜める。
「これが最後のチャンス。君が優秀ならわかる筈だよ?何と答えるべきか、どちらの道を選ぶべきか」
耳にかけた髪が落ち、コウガの頬をくすぐる。
フフっと笑う彼はコウガの様子を気にする事なく、ゆっくりと顔を近づけてゆくと再び口を開く。
「僕の元に来てよコウガ。共にこの世界を変えよう。この腐った世界を、この醜く歪みきった世界を、僕達の手で、僕達2人の力で創り変えるんだ」