Blood†Tear

 「くっ…っ……」


身体を貫く鋭い刃。
背にある切っ先から零れる雫。
息をするだけで鈍い痛みが身体中を駆け巡る。




 「ん……?」


喉の奥で笑うライアは突き刺したレイピアを彼女の身体から引き抜こうとするが、それは拒まれて抜く事が出来ない。


見下ろせば、鍔と彼の手を握るクレアの左手。

伸びてきた右手はライアの襟を掴みクシャリと握る。


苦痛に顔を歪めるクレアは刃をその身に繋ぎとめ、彼を逃すまいと耐え続ける。




 「…馬鹿馬鹿しい……」


低く呟くライアはレイピアを引き抜こうとするが、引いた分だけ直ぐに押し戻され元の位置へと戻される。


何度引いても、幾らえぐっても抜けない刃。


どれだけ血を流そうとも掴む手を離す事はなく、鋭くライアを睨みつけるクレア。




 「…っ…コウガ……!」


一際大きな痛みに襲われながらも口にし叫んだ言葉。


血に染まるこの現状で頼りになるであろう人物の名を呼んだのだ。




 「ハハッ…無駄だよ。無理に決まってる。残念だけど、彼は君を助けになんか来ない。だって彼は、僕に手を出す事なんてそんな事出来や――」


嘲笑うライアだが、その背から勢い良く噴き出す鮮血。

がら空きだった背を斜めに斬られ傷を負う。


肩越しに振り向けば、直ぐ傍で剣を振り下ろす人物の姿が目に入る。




 「…コウガ……」


彼の姿を目にし名を呟くクレアはホッとしたのかライアを掴むその手を離す。


自由の身となったライアは彼女からレイピアを引き抜きその場から離れると傷口に手を添え治癒をする。




 「…何故…どうして……」


 「何故かって…そんな事決まってるだろ……仲間がこんな目にあってるんだ。何もせずにいられる筈がないだろうが!」


何処か困惑しているように見えるライア。


そんな彼を睨むコウガは怒りを露わに声を荒げた。





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