Blood†Tear
鋼同士がぶつかり合う。
目にも留まらぬ速さで振り下ろされる鋭い刃。
流れるような無駄のない身のこなし。
瞬きする隙さえ与えぬ緊迫した攻防戦が続く中、加勢しようと試みるレオン達だが、一向に手を出せずにいた。
無闇に突っ込んでしまえば、コウガのペースを乱す恐れがある。
否それ所か、此方が危険な目に合う確率の方が高い。
それ程に2人の攻防は激しいものなのだ。
「くっ……」
「ハハッ…思った通り、君の血はとても綺麗だ……もっと見せてよ、その鮮やかで温かな君の血を!」
ライアの攻撃を完全には避けきれず、横腹に傷を負い顔を歪めるコウガ。
彼の怯んだ隙に心臓目掛けレイピアを突き出すが、それはひらりと交わされる。
ギリギリの所で交わした為、刃が身体を掠るが気にする事は無い。
突き出された刃は標的を失い、直ぐ傍でよろけるライア。
このチャンスを逃がすまいと、コウガは握った剣を振り下ろす。
「っ……!」
身に迫る刃を目にしたライアは目を見開き、咄嗟に身を捻りながら退避する。
跳んだ際に剣の切っ先が太股に触れ、浅く長い傷を負うライア。
傷口から血が流れ出て、既に他人の血で汚れるその脚を更に赤く染めあげる。
その様子を見つめる彼は声を上げ笑い出し、警戒するコウガは荒い息を吐く。
互いに傷を負うコウガとライア。
力は互角のようにみえるこの2人。
どちらが優勢でどちらが不利なのかわからない。
武器を手に睨み合い緊迫した空気の漂う中、見つめるレオンの喉はゴクリと鳴り、額に冷や汗を浮かべるクレアは鎌を力強く握り締める。
見ている此方がハラハラする。
心臓は小刻みに鼓動を打ち、息をするのも忘れてしまいそうだった。
どうにかなってしまいそうで、気が狂いそうな程長い時間。
止まったようなその時間を動かしたのは、同時に地を蹴ったコウガとライアの2人だった。