Blood†Tear

互いに距離を詰めた2人は同時に刃を振り下ろす。


手首のスナップを利かせレイピアを振るうライア。

柄を力強く握り締め素早く斬りかかるコウガ。


その2つの刃はぶつかり合い、互いに後ろへ弾かれる。


体勢を崩す中、休む暇なくすぐさま次の攻撃へと移行する2人。



突きを繰り出すライアはこれが最後の攻撃と言わんばかりに心臓へと狙いを定め、構え直したコウガは彼の細い首目掛け剣を振るう。



このままでは相討ちとなる。


誰もがそう思った。


当の本人であるコウガやライア自信もそれは理解している。



だが、どちらも引く気は無い。


死が迫る恐怖に怯える事も、臆する事も、逃げる素振りさえも見せやしない。



只真っ直ぐに相手を見据え、相手を仕留める事のみを考える。




互いに駆け引きをしていたのかもしれない。


自分が退くか、相手が退くか。
共に死ぬか、生き残るか。



数秒と言う短い時間の中で、2人は考えに考え抜いた。



その結果、そんな賭は成立しないものとなった。



どちらもが自らの意志を曲げる事無く、真っ直ぐに貫き通す。

そう決めたから。




 「「コウガ!!」」


見守るレオン達は名を叫ぶ。


自分達の声など届きはしない事位、こんな叫びに何の意味も無い事だってわかっている。


だがそれでも、叫ばずには居られなかったのだ。


声を出さずには居られなかったのだ。


そうでもしないと、気が狂ってしまいそうで。

何か間違いを犯してしまいそうで。



見守る事しか出来ない自分達にはそれ位しか為す術はなく、何もできやしない。



だから彼の名を叫ぶ。


かけがえのない仲間である彼の名を


生き抜いて欲しい彼の名を。


大切な友の名を。






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