Blood†Tear
時刻は夜の9時。
昼間急変した空は雨をもたらし、冷たい風と共に降り続けていた。
自宅へと戻ったコウガは机に座り、スラスラとペンを進める。
そんな時、傍に置いてあったコップがカタリと静かに揺れた。
何かを予兆するように起きた現象に、目を細めながら微かに揺れる水を見つめていると…
ドーーン!
突然鳴り響いた爆音。
そして叫び声。
その音を耳にした瞬間、目にも留まらぬ早さで外へ飛び出す。
目にしたのは、荒れた町並みだった。
窓ガラスは割れ、売り物の果物は地に転がっている。
「何があったんです!?」
出会したポポルに訪ねるが、わからないと首を振る。
すると先程よりも大きな爆音が再び鳴り響いた。
「町長の所からだよ!」
「一体何が……」
彼女に逃げるように言うと、コウガは爆音のした方へと走り出した。
逃げ惑う人々の間をすり抜け辿り着いた町長の家。
大きな玄関口は吹き飛ばされ、部屋の中は荒れていた。
飾られていた絵画は形もなく燃え、高価な花瓶は地に落ち割れている。
その中を警戒しながら歩いて行くと、ある人物を発見した。
「ジョゼノフさん!」
「…ぅ……」
黒髪の男性、ジョゼノフ。
この町の町長であり、アリアの父でもある。
傷だらけの彼を抱き起こすと、無事であるかを確認。
苦しそうではあるが息はある。
「……ァ……!」
「喋らないで下さい!」
何かを口にするが、それを制する。
しかし彼はコウガの腕を力強く掴むと、苦痛に顔を歪めながら叫ぶ。
「…リア……!……アリア…!!」
と…
その言葉にハッとした。
そう言えば、彼女の姿がどこにもない…
ここにいないという事は…
コウガは傷を負うジョゼノフを救出に来た人達に預け外へ出る。
「…アリア……!アリアーー!!」
後ろからは、ジョゼノフの悲痛な叫びが聞こえてきた。
その声には、どこか憎しみの感情が感じ取れたのは気のせいか…
そんな事は気に止めず、物凄い早さで走り出す。
彼女がいるであろう、教会を目指して。