Blood†Tear
「シェノーラ様、そろそろお時間が……」
シェノーラの後ろで待機していた侍女が静かに言う。
するとシェノーラはカタリと音を立ててティーカップを机に置いた。
微かに震える手を握り締める彼女は、何処か脅えたように見える。
「シェノーラさん、貴女は……」
心配そうに見つめるリオンは無意識に彼女の過去・未来を観てしまい、何か言おうと口を開くが言葉を止め悲しそうな瞳をする。
そんな彼に大丈夫だとニコリと微笑むがその笑顔はぎこちない。
彼女の様子に顔をしかめると勢い良く立ち上がるジーク。
彼は馬車に向かって歩み出した。
「レオンさん、狼一族の底力、見せて下さいよ」
「なっ…だったらお前も手伝……」
ジークの低い声にレオンは反発しようとしたが言葉を止める。
彼の瞳に馬車の背に回るジークの姿が映ったからだ。
ジークは馬車を押すイースと変わり、不真面目なクレアの隣に立つ。
「クレアさん、貴女それでも、赤目の彼を殺れると思ってるんですか?」
片手を馬車に添え言う彼の瞳は冷たくクレアを見下ろす。
彼の言葉に驚いたように目を見開き見上げると、鋭い紺の瞳と目が合う。
その瞳を睨み悔しそうに唇を噛むと拳を握る。
ジークと変わったイースは片手だけ馬車に添える状態の彼をやる気があるのかと不信に思いながら、コウガの元へと駆け寄りロープを引くのを手伝う。
「一斉に力を合わせよう」
コウガの声に皆頷き一度深呼吸。ロープを握り直し馬車に手を添える。
そして一斉に力を込めた。