Blood†Tear
4.孤独な少女

山に囲まれた小さな街。
隣接する街はなく孤立しているものの、街は賑やかでそれなりに繁栄した様子である。


大人達は店先で笑い合い、子供達は元気に駆け回る。



余所見をしながら駆けてきた少年が、正面からコウガにぶつかった。


その少年の肩に手を置き、屈んで大丈夫かと顔を覗き込む。

少年はハの字に眉を寄せ恐る恐る顔をあげるが、優しく微笑むコウガを目にし、ごめんなさいと一言謝ると再び駆けて行った。




 「何だか、賑やかな街ですね」

この街にやってきたコウガ達6人。
リオンに付き添うイースは呟き、華やかな雰囲気にレオンは辺りを見回した。


一方クレアは顔を伏せ、長い銀髪で顔を隠す。





暫く歩いた後、リオンはある家の前で立ち止まった。

それは普通の一軒家。
周りの家々と何の変わりもない。


リオンはその家を見上げた後、意を決した様に扉を開けた。








家の中はシンプルな造り。
広い空間の真ん中に机が1つ。
壁際にあるのは分厚い本がびっしりと並ぶ本棚。
二階もあり、そこにも本が並ぶ。

部屋の中に人影はなく、静かな場所である。





部屋の中を呆然と眺めていると…




 「遅かったではないか、我が同胞よ」


人の気配のなかった二階から聞こえた女性の声。


6人全員がその声に反応し、そちらへと目を向けた。


そこには左目を前髪で隠した赤髪の少女が1人、ちょこんと柵に腰掛ける。




 「…セルビア……」


 「久しいな、神の子リオン。待ちくたびれておったぞ」


リオンが少女の名を呼ぶと、彼女は見た目に相応しくない、大人びた口調で話す。



 「セルビア……神殺しの……」

 「神殺しとは、嫌な名を付けてくれる」


少女の名に反応したジーク。
顎に手を添え呟くと、少女はその言葉を耳にしジークを見下ろす。

そして彼女はフッと笑うと柵から飛び降りた。





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