Blood†Tear
『すまぬ。心を読んでしまったようだ。』
コウガの反応に謝る彼女。
だが彼女の唇は動いていない。
それで確信した。彼女はコウガの心に直接話しかけているという事を。
『物分かりがいいな、君は』
『セルビア、君はリオンの力を奪ったのか?』
話が早くて助かると微笑む彼女に、コウガは冷たく問い掛けた。
すると彼女は再び笑う。
『奪ったとは言葉が悪い。この力はリオンも了承済みだ』
『了承済み?』
眉間に皺を寄せ問うと彼女はコクリと頷く。
『リオンだけは信じておる。だから彼には許可を得た。そして未来を視る青の瞳を分けて貰った。ただそれだけだ』
そう言うと彼女はコウガを鋭く睨む。
『我は君の力が欲しい』
突然話を逸らしたセルビア。
彼女の言葉にコウガは眉を潜める。
『…俺は大した力は持っていない……』
『何を言っておる。お前は持っておるだろう。巨大な力を……』
嫌みに笑うセルビア。
意味ありげな言葉に何が言いたいと顔をしかめていると…
「大丈夫か?コウガ」
レオンが心配そうに声をかけてきた。
何も言わず佇んでいたコウガを不信に思ったのである。
「大丈夫。何でもないよ」
ハッとして微笑みそう言うと…
「イース!?」
ガタリと何かが倒れるような物音と、驚いたように叫ぶリオンの声。
何が起きたのかとそちらへ顔を向けると、そこにはクレアに寄りかかるイースと彼女に駆け寄るリオンの姿があった。
レオンは歩み寄りイースの様子を伺う。
赤く染まる頬。
荒い息づかい。
コウガは屈みイースの額に手を添えた。
「熱がある……」
数秒して手を離しそう言うと、コウガは彼女を軽々と抱えた。
そして何処か休める宿を探そうと外へ出た。
「隣を使うといい。部屋は空いておる」
宿を探しに行くコウガ達を引き止めたセルビア。
隣の家を指差し、近くにいたジークに鍵を渡すのだった。