Blood†Tear

 「遅くにすみません」


灯りも付けず、蝋燭だけに火を灯すセルビアの家に訪れたリオン。
彼は礼儀正しく頭を下げる。
セルビアはそんな彼に席を勧め、彼の向かいに腰掛けた。



 「リオン、君は変わった者達を連れておるな」


ミルクを注ぎながら言うと、肘をつきそれを口に運ぶ。



 「特に彼、コウガと言ったか、彼には興味がある」


口の端を吊り上げ笑うが、反応のない彼を目にし溜め息を吐いた。


 「無駄話はしたくない、か……君は相変わらず真っ直ぐだな、リオン」


 「貴女こそ、変わっていませんね、セルビア」


 「何を言う」


落ち着いた物言いのリオンにフッと笑う彼女。
指でコップをつつきリオンに勧める。



 「本心を隠し強がって、本当は何時も、心は泣いているのに……」


彼の言葉にガタリと音を立てコップを置いた彼女は、不機嫌そうに席を立つと本棚の方へと歩いて行った。



 「そろそろ本題に入るとするか」


話を逸らすようにリオンに背を向けそう言うと、一冊の本を手に取った。

そしてその本をパラパラと捲りながら目を素早く動かす。



 「セルビアには、何時も頼ってばかりですね……」


そんな彼女の後ろ姿を見つめ、リオンは両手をコップに添えながら呟いた。



 「我は君の為なら何でもするさ。君は我の唯一大切な友であり、心を許せる存在なのだから」


 「僕が何をしようと、そう言えますか……?」


悲しそうな瞳でコップの中身を眺めるリオン。
彼を心配そうに見つめた後、パタンと本を閉じる。



 「もう何も言うな……さぁ、準備は出来た」


そう言うと彼女は手にしていた本を手離した。




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