Blood†Tear
「うえーん……えーん」
視界が暗闇に包まれたと思えば、何処からか聞こえてきた子供の泣き声。
その泣き声と共に暗い視界に差し込んだ光。
眩い光に目を細め、その明るさに慣れてきた頃に映ったのは、座り込んで泣きじゃくる小さな子供と、その子を見つめるオッドアイの少年の姿。
「リオン…?」
悲しそうな瞳をする少年に見覚えのあるコウガは彼の名を呼ぶが、彼は何の反応も示さない。
『リオンには、君の姿は見えておらんし、声も聞こえておらんよ』
頭に直接響くのは、どこか楽しそうに言うセルビアの声。
反射的に振り返るが彼女の姿は何処にもない。
「どういう意味だ?」
『何、君がリオンを心配しておる様だから、今のリオンを見せておるのだよ』
怪訝な顔で問うと、彼女は何か問題があるかと首を傾げながら姿を現した。
「懐かしいな。幼い頃の彼はよく泣いておった。今では泣く事も笑う事もないがな」
「幼い頃の、彼?」
彼女の言葉に疑問を持ち首を傾げると、彼女は泣き止む様子のない子供を見つめたまま頷いた。
『あそこで泣いておるのはリオン。幼き頃の、幸せだった頃の彼だ』
「幸せだった頃の……」
以前リオンは言っていた。
ある人に会いに行くと…
大切な時を取り戻すと…
その目的が今の状況と何か関係があるのだろうか?
ふとそんな事を考えるコウガは2人のリオンを交互に見つめていた。
すると、泣きじゃくる幼きリオンの元に突然現れた、赤紫色の髪をした少女。
少女はリオンの隣に腰を下ろすと、優しく頭を撫でた。
「この小悪魔が…」
少女を目にした瞬間毒を吐くセルビア。
鋭い眼差しで少女を睨み、爪を噛む。
「うぅ……お姉ちゃん!」
未だ泣き続ける少年は隣に腰かける少女を目にすると、勢い良く彼女に抱きついた。
お姉ちゃん…
リオンはそう言った。
確かに彼女はリオンにどこか似ている。
しかし、髪は赤紫、瞳はグレー。
エメラルドの髪のリオンとは正反対の容姿なのである。