Blood†Tear

幸せそうな4人の姿は消え、白い雲の流れる青い空、風に靡く草原へと変化した景色。



眉を潜め辺りを見回していると、何処かへ歩を進めるリオンの姿が目に入った。



彼の歩む先にあるのは、何もない草原に佇む2つの石碑。



目的の場所までたどり着いたリオンは、いつの間にか手にしていた花束をそっとその石碑に手向けた。



石碑、否、お墓のようであるその前に膝を折るリオンは、胸の前で手を組み瞳を閉じる。



コウガの隣で座り込むセルビアはそんなリオンの姿を見ようとはせず、草をむしりながら呑気に欠伸をしていた。


今の状況に触れて欲しくないのだろう。
消してコウガとも目を合わさなかった。



彼女に聞かなくても分かる。
リオンが祈りを捧げるこのお墓は、きっと彼の両親の物なのであろう…



状況を把握したコウガは悲しい瞳でリオンを見つめる。

そんな彼の視線に気づく事なく、長い時間瞳を閉じた状態でいた彼は、ゆっくりと瞳を開いた。




 「僕は……僕は彼女を止めます……例えそれが間違っていようと……」


とてめ辛そうな瞳をして呟くと、突如突風が吹き荒れた。


突然の風に目を瞑ると、次に視界に広がったのは、爆睡するレオンのいる薄暗い部屋だった。



彼のいびきが響く中、背後から感じる人の気配に振り返る。

そこにあるのは窓枠に腰掛ける赤髪の少女の姿。

彼女は脚をブラブラと揺らしながら大欠伸をする。



 「ハァ……悩みも解けた事だ、これで安心して眠れるだろう?我はこの辺で失礼するとしよう」


嫌味に笑う彼女はそう言うと、背中から落ちるようにして窓から飛び降りる。


心配したコウガは窓枠から下を見下ろすが、彼女の姿は何処にもない。



悪戯好きの彼女に呆れ深く溜め息を吐くと、疲れたのかベッドに腰掛けそのまま寝転んだ。


数秒の間天井を見つめていたが、強い睡魔に襲われ瞳を閉じる。


そしてそのまま眠りの中へと意識を手放した。





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