Blood†Tear
「レオン!?」
飛び出した彼の名を呼ぶが、彼にはその声は届いていないようだった。
軽やかに着地したレオンは前方を走る2人の少女目指し駆けて行く。
「キャー、変なおじさんが追いかけてくる!」
追ってくるレオンの姿を見つけ、楽しそうにそんな事を言う少女。
ケタケタと笑う少女は草履を擦りもう1人の手を引き駆ける。
「誰がおじさんだ!この餓鬼!」
更に苛立ちの募ったレオンはスピードを上げ2人を追うのだった。
「元気がいいな、彼は」
レオンの飛び出して行った部屋で、ある人物がそう言った。
赤髪のボブヘアーをした少女、セルビアである。
何が可笑しいのか駆けていくレオンを見つめ嫌味に笑っていた。
「リオン様!」
突然声をあげたのはイース。
セルビアの後ろに立っていた少年の姿を見つけ、イースは彼に駆け寄った。
「体調の方は大丈夫ですか?イース」
「はい、お陰様でこの通り。それよりもリオン様、イースは護衛を続けてもいいのでしょうか…?」
突然そんな事を言いだしたイース。
俯く彼女は今にも泣き出しそうな程悲しい瞳をしていた。
「何を言ってるんですか、イース。僕はイースを家族だと思っています。だから僕と一緒にいてくれませんか、イース?」
「リオン様……」
彼女の言葉に驚きながらも、優しく微笑み言葉を返す。
リオンの優しさにとうとう泣き出してしまったイース。
そんな彼女の頭をそっと撫で、穏やかな面持ちで見つめるリオンは、とても大人びていた。