Blood†Tear
時は戻り3日前の事。
スウィール国と言う栄えた国にある、大きく豪華な屋敷。
その屋敷のある一室に、栗色の長い髪をした、優しい瞳の女性の姿があった。
窓から覗く景色を見詰める彼女は、コウガ達が山で手を貸した女性、シェノーラである。
彼女はコウガ達と別れた後、足早にこの国に戻っていた。
外を眺める茶の瞳はどこか悲しそうな色をし、静かに溜め息を吐いていると、突然部屋の扉がノックされ、誰かが部屋へと入って来た。
「お戻りになられたのですね、ローグ様」
部屋に入って来た人物を目にすると、にっこりと微笑みその人物へと駆け寄る。
ローグと呼ばれたのは、銀髪に黒の瞳をした、30代後半の男性である。
「戻ったばかりなのだが、直ぐに出なくてはならないんだ」
彼は優しい面持ちでそう言うと、彼女をそって抱き締めた。
そしてすまないと一度謝ると部屋を後にする。
「そうだ、君にプレゼントがあるんだ」
部屋を出る手前で何か思い出した彼は、彼女の元に戻ると小さな箱を差し出した。
「ありがとうございます」
満面の笑みで礼を言い受け取ると、彼女はその箱の蓋を開ける。
中身を目にし、歓喜の声をあげる。
そしてとても幸せそうな笑顔を見せる。
その筈だった。
なのに、中身を目にした瞬間、彼女は恐怖で目を見開いていた。
微かに開いた口からは喜びの声も出る事なく、決して笑顔を見せる事はない。
目を見開いたまま身動き1つ見せない彼女の頬に、突然鋭い痛みが走った…
その痛みが走ると共に彼女は手にしていた箱を落としてしまい、バランスを崩し床に倒れる…
倒れる途中で見えたローグの瞳…
醜いものを見るような、愚かなものを見るような、そんな瞳…
その瞳に彼女は、どこかで恐怖を感じていた…