無題
僕の親は、僕が1歳の時自殺した。借金があって、どうしようもなかったんだと、今僕を育ててくれている、おばさんが、悲しい顔でいっていた。自分でいうのもなんなんだけれども、僕は親と言うものがあまり分からなかった。愛情なんてこれっぽっちももらってこないで育ってきたからだ。僕は5歳で、自分のことをいつの間にかやるようになっていた。人には迷惑をかけたくないという自分の理性が働いたんだろうと思った。

「・・・?本当に冷血人なの?」

彼女は、目を大きく開いて僕にいった。僕をため息をひとつついて、ああそうだよといった。そうしたら、また彼女は不思議なものを見るような目で僕にいった。

「あたしはそんな風に見えないけれど?」

普通にいう彼女に僕は驚いた。なぜ、彼女は普通にそんなことが言えるのだろうか、彼女には自分にも分からない性格を見抜く力なんてあるのか?

「なんでそういえるの?」
「だって、まだ、目に光があるじゃない」
「君にそんなの見えるの?」
「え?誰にだって普通見えるもんじゃないの?それにあたしの名前は三浦 彩だよ」
「ふぅん、あ、僕は上坂 恭一」
「じゃあ、恭一君だね」

彩は笑って、僕の手をもって握手をしてきた。別に自己紹介したって、どうせ、あんまり会わなくなって僕らの名前もいつか忘れてしまうのに。それでも、彩の手は温かく僕の冷えきっていた手を温めた。

「彩!」
「?あ、聡美!」
「もう!どこいってたの?心配したんだから、優嘉が男子とケンカしてて泣いてたって心配してたのよ~?」
「アハハー・・・でも、恭一君結構やさしいよ?」
「!」

聡美とかいう身長が高いこの子は彩の友達か、聡美は僕の方をちらりと見ると気まずそうに笑って、

「じゃあ、これで私たちはさようなら!」
「うっわ!あ、恭一君さよならー!辞典は返すね!」

よく分からないが、聡美は焦ったかのように、走っていった。図書館ではあんまり走んないでほしいな・・・ああ、無駄な時間を過ごしたな、早く勉強しないと・・・

そうして彩から返してもらった辞典を持って僕は机へと向かった・・・そういや、まだ、彩のぬくもりが手に残っていた。
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