魅惑のヴァンパイア
「……ヴラド?」


顔を上げて、ヴラドを見た。


ヴラドは大きなため息をついて、私を見た。


いつもの、冷静なヴラドに戻っていた。


「お前は……あいつに近付くなと言ったのを聞いてなかったのか?」


「ご……ごめんなさい」


しゅんとして俯くと、ヴラドが柔らかく私を抱きしめた。


「余り心配をかけさせるな。心臓が止まるかと思った」


――え? 


心配して……慌てて来てくれたの?


驚いて顔を上げた私の頬に、ヴラドは優しく手で触れた。


包み込むような、優しい蒼い瞳。


最初は、冷たい目だと思っていた。


でも今は……。
< 116 / 431 >

この作品をシェア

pagetop