魅惑のヴァンパイア

 宮殿の森の奥に、ひっそりと佇む別館。


生い茂る冷たい木々が、秘密の宝を隠すように存在している。


王室の中でも、選ばれた一部の者しかその別館の存在を知らない。


別館の中で勤務する者は、全て影の組織。


表舞台には、決して出ることのできない、危険な仕事を任されている。


 魔界の風に揺られ、ピーターはストンと最上階のベランダに降り立った。


暗い書斎。


本と書類が雑然と机に並べられていた。


突然、カーテンが強風で靡き、窓が勢い良く全開した。


「うわっ!」


 暗い書斎の奥から紅く光る眼光が、ピーターを捕らえた。


「ま、待て! 僕だ! ピーターだ!」


 慌てて殺気剥き出しの瞳に向かって叫んだ。


すると、紅い光は輝きを失い、代わりに冷たい蒼い瞳に変化した。
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