魅惑のヴァンパイア
「なんだ、お前か。危うく殺すところだったぞ」


 地底から響く声のような重低音が、意地悪く笑った。


ふふ……相変わらず物騒な刃のようだ……。


凄まじい眼力を目の前にし、知らずに手にびっしょりと汗を掻いていた。


「ここには来るなと言っただろう」


 呆れたように、ピーターを一瞥すると、書斎の机に座り書類を整理し出した。


「今日、ヴラドの家に行って来たよ」


 ピーターに全く興味を持とうとしなかったのに、この一言で、ピタリと動きが止まった。


「……何?」


 ゆっくりとピーターの方を振り向いた。


氷のような瞳だった。


「この前逢った子猫ちゃんに逢いたくなってね」


 ヴラドはピーターを睨み付けた。


 おお、恐っ。


怒ってる、怒ってる。
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