魅惑のヴァンパイア
「……シャオンに何かしたのか?」


 地響きが起きそうな声だった。


 気心知れた仲なのに、一歩たじろいでしまう。


「あわよくば……と思ったけど、執事に邪魔をされてしまったよ」


 どうせ隠していても知られるなら、素直に自分から言ってしまった方がいい。


「シャオンに……触れてはいないだろうな?」


 立ち上がって詰め寄って来た。


 こんなに感情を露わにするヴラドは初めてだ。


危険な綱渡りだが、新鮮でとても魅力的だ。


「……触れたと言ったら?」


 ヴラドの瞳の色が紅く染まった。


「……自分を抑えきれずに、お前を殺すだろう」


 ゾクっとした寒気を感じた。


 ――殺す、か……。


 執事に言われた時は、まさかとは思ったが、女一人のためにここまで振り乱されるとは……。


 しかも、人間の……。
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