魅惑のヴァンパイア
「妊娠するはずがない」


「なぜ?」


「俺を好きになるなと最初に言っておいた」


「子猫ちゃんのことを好きなんだろ? なぜそんなことを」


ヴラドはピーターの瞳を見つめ一瞬黙り込み、ピーターの何もかも見透かしている瞳を見て、観念したように大きなため息を吐き、瞳を逸らした。


「……ああ愛している。だからこそ好きになるなと言った。危険だと分かっていても止められなかった。けれど、そんなことを言う必要はなかった。シャオンは俺を憎んでいる」


 憎んでいる? どこが? 


僕にはヴラドに首ったけに見えたが。


「俺はシャオンを買い、無理矢理抱いた。そんな男に惚れるはずがないだろう?」


なんてことだ。百戦錬磨の色男が。


自分の惚れた女の気持ちすら分からないなんて。


「……ヴラド、お前はいつからそんなに鈍感になったんだ?」


「何を言っているんだ、ピーター。見てれば分かるだろ? シャオンが俺を嫌っていることくらい」


 ピーターは頭を抱えた。


 こいつらは、周りから見ればお互い愛し合っていることが分かるのに、本人達は全く気付いていないなんて。


なんてバカなんだ。
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