魅惑のヴァンパイア
「俺にはその権利がない。例え王を殺したとしても、俺が王位に就くことはない」


「なら、あなたが王位に就くまで、邪魔者を殺し続けるのみ……」


 男は金色の髪を風に靡かせ、妖艶に微笑んだ。


「なぜ俺を王にしたがる!?」


 思わず声を荒げた。


身分の低い母から生まれた俺をなぜ……。


「言ったじゃないですか。あなたこそ、王位に相応しい方だと」


 男は漆黒のマントを空に掲げた。


「ま、待て!」


「またお会いしましょう。私達のプリンス」


 マントを風に靡かせ、身体を包んだ。


冷たい風が舞い上がり、小さな竜巻が男を包みこむと、男の姿は露と消え、閑散とした街の景色が後に残った―――
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