魅惑のヴァンパイア
「ん……ヴラド?」


 起してしまったか。


罪悪感を抱きながらも、寝ぼけ眼を擦るシャオンを見つめた。


「遅かったのね」


 少しムッとしている表情。


無理もない、こんな夜中に起されたのでは。


「俺は忙しい」


「……いつもそればっかり」


 不機嫌で口の悪いシャオンの口を塞ぐように、口付けした。


……俺にはこの方法しか分からない。


慰め方も知らないし、怒りを静める優しい言葉も知らない。


ただ、自分の溢れる愛しさを伝えようと口づけを交わす。


――嫌がられているとは分かっている。


それでも触れたくて仕方がない。


「ヴ…ラド……」


 甘い吐息と、潤んだ瞳が俺を惑わす。


人間の命は短い。瞬きをしてしまえば、一瞬でいなくなってしまう幻のようだ。


失いたくない。


永遠に俺の元に……。
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