魅惑のヴァンパイア
「そうだ……お前は、俺の物だ。俺の胸で命を果たせ」


 涙が口に零れ落ちると、ヴラドはその雫を掬い上げるようにキスをした。


抱きしめられた胸の中で、終焉を感じた。


 ねぇヴラド。


もしも私が歳を取って、醜くなるその前に、どうか私を殺してね。


ヴァンパイアにとって、人間の命なんて儚いものなのだとしたら、私が華やいでいるのなんてほんの一瞬。


だからお願い、それまでどうか飽きないで。


花弁が枯れ果てるその前に、ほんの少し名残惜しい時に私を殺して。


あなたの剣で、あなたの胸の中で、紅く染まる私を抱きしめて。


あなたの瞳に映るその中で、私はきっと永遠になる。


あなたへの想いを胸に秘めたまま――

 
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