魅惑のヴァンパイア
「少し、熱いですね。身体の具合はどうですか?」


「頭が痛いとか、咽とか鼻は大丈夫なの。ただ、ご飯の匂いを吸い込むと気持ち悪くなっちゃって……」


 バドは真剣な眼差しで私を見つめた。


「……医者を呼びましょう」


「医者だなんて! ただいつも夜更かしをしているだけよ」


「ちょっと診てもらうだけです。大丈夫ですよ」


 優しく微笑んだ口元に似合わない、鋭く怯えた目付きだった。

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