魅惑のヴァンパイア
「じゃから、愛し合ってしまったから妊娠したのじゃろ」


 当たり前のように淡々と言う老婆。


ヴラドのことを知らないからそんなことを言うんだ! 


ヴラドが私を愛するはずがないのに……。


「好きになってはいかぬ相手だったのにのう。じゃがもう遅い。お前は死ぬ」


 ――死ぬ? そんな、そんなバカな……。


「嘘よ! 嘘! 絶対信じない! 妊娠なんて……するはずがないの!」


半狂乱になった私を見て、バドは老婆を帰らせた。


一人になった寝室で、両手でお腹を抱えて泣いた。


 ウソ…ウソ…ウソ……。


だってヴラドが私を好きになるはずない。


 妊娠なんかしていないと思っても、お腹に熱く何かを感じた。


今まで感じたことないもの……。


自分の心臓の他に、確かに感じるもう一つの命。


 どうして? どうして? 


愛し合っていないはずなのに、どうして妊娠しちゃったの?
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