魅惑のヴァンパイア
 コンコン


「失礼します」


 バドが神妙な面持ちで入ってきた。


「シャオン様……」


 憐れみの瞳。


泣いている私の側に近寄ってきた。


思わずガシリとバドの腕を掴んだ。


「お願い! ヴラドには言わないで!」


「……それはできません」


「駄目! お願い! ヴラドには言わないで!」


泣き喚く私に、バドは困惑した顔を隠せなかった。


「お願い! 一生のお願い! ヴラドにだけは……ヴラドにだけは……」


「なぜです? なぜ隠すのです?」


 その答えは口にすることができなかった。


『俺を好きになるな』と言われていたのに、愚かにも私はヴラドを愛しすぎてしまった……。


 
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