魅惑のヴァンパイア
「……何をする」


 俺を誰だと思っている、という顔でヴラドは阻んだ衛兵を睨み付けた。


「これより先はいかなる客人であろうとも通すなと言われております」


 甲冑で顔を隠した衛兵が臆することなく言った。


「何を……!?」


 ヴラドの後ろで控えていた家臣の一人が食いかかった。


『この方は王子であられるぞ!』と言ってやりたかったが、咽奥で言葉はつっかえた。


洋館で勤務しているヴァンパイアの中でも、ヴラドが王子だと知る者は少ない。


限られた力のある者だけがその秘密を知り、影ながら守ってきたのだ。



 強いのはいいが、彼らは多少喧嘩っ早い。


ヴラドは王宮前で争いを起こしたくないと思い、下がるよう目で命じた。
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