魅惑のヴァンパイア
舞踊会で会った時より堂々とした振る舞いに、少女の成長を感じさせた。


しかし、伸ばした腕が、棒きれのように細くなっていたことをピーターは見逃さなかった。


執事から出されたのは、焼きたてのアップルパイに紅茶。


美味しそうな匂いが鼻を掠めた。


「おや? 子猫ちゃんは食べないのかい?」


 焼きたてのアップルパイはピーターの前に一つだけで、シャオンにはオレンジジュースのみが置かれていた。


「私は冷めてからいただくので、どうか遠慮なさらずに」


「おいおいまさか猫舌なのかい? 温かいうちの方が美味しいよ。ほら」


 一口サイズに切ってシャオンの前に差し出すと、アップルパイの湯気を嗅いだ途端、手を口に当てて、凄い勢いで出て行ってしまった。


差し出したアップルパイを見つめ、呆然としていると、シャオンと入れ替わりに執事が入ってきた。
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