魅惑のヴァンパイア

「では明日の宵の刻、俺は出発する。くれぐれも、シャオンを頼んだぞ」


「かしこまりました」


　ラシードはベランダに出て、漆黒の夜空に消えていった。


冷たい風が寝室に入り、ヴラドの頬を優しく撫でた。


　――この世界を見られるのは、これで最後かもしれない。


命を失おうとも、シャオンとお腹にいる子供だけは、なんとしても助けなくては。


　ヴラドは星一つない漆黒の夜空を見つめ続けた―――