魅惑のヴァンパイア
待っていた言葉は、そんな最悪の言葉ではない。


よりにもよって、今日だなんて……。


神様は私に最後の願いを叶えさせるために、ヴラドと朝食を共にさせたの? 


 最高の一日になる予定だったのに、待っているのは永遠の別れ? 


 うたかたの夢は、うたかたでしかないんだ。


「……行かないでと言ったら?」


 震える声で尋ねた。


 情景が歪んで見えるほど、私の心は動揺していた。


「俺が行かなかったら、お前は死ぬ」


「それでもいいから行かないでと言ったら?」


 ヴラドは私から目を逸らして、大きなため息をついた。


「それでも行くだろう」


 カチンときた。


怒りの沸点を越えてしまった。


 何も分かってない。


ヴラドは私のことを何も分かっていない!


「何の為に!? 私は死んでもいいと言っているのに、どうしてわざわざ死にに行くようなことをするの!? ヴラドが死んでしまったら、私と子供はどうなるの!? こんなわけも分からない世界で、どうやって暮らせというの!?」
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