魅惑のヴァンパイア
「シャオン……開けてくれ」


 いつもは有無を言わさず、手も使わずにドアを開けるのに。


開けようと思えば、簡単に開けられるはずなのに。


 それをしないで、私の意思を尊重してくれていることに気が付いて、ベッドから起き上がり、ドアに近付いた。


「開けない、入って来ないで」


 もしも、無理矢理入ってきていたら、ずっと無視し続けていたかもしれない。


「シャオンが怒る理由は分かる。だが、これは国を守る王として、やらなければいけない仕事でもあるんだ」


「政治のことなんて私には分からない」


「そうかもしれない。けれど、こんな形で別れたくない。……もう最後かもしれないのに」


 最後、という言葉に胸が痛んだ。
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