魅惑のヴァンパイア
「うん、行ってらっしゃい」


 バイバイでも、さよならでもなく、『行ってらっしゃい』


『行ってらっしゃい』って言われたら、『ただいま』って言って帰って来ないといけないんだよ?


絶対……帰ってきてね。


バドが後ろで心配そうにヴラドを見つめていた。


「シャオンを……頼む」


「命に代えても」


 執事に短い挨拶を終えた後、ヴラドは私を抱きしめた。


「俺が帰ってきたら、結婚式を挙げよう」


 耳元で囁かれた言葉の重みに、堪えていた涙が溢れそうになる。


「……うん。絶対に……帰ってきてね」


 ヴラドはやっと聞き取れるくらい小さな声で「ああ」と返事をした。


 ダメ。ダメ。泣いちゃダメ。


 私は、強くならなきゃいけない。


どんな時も笑顔で見送らなくちゃ。
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