魅惑のヴァンパイア
ヴラドは漆黒のマントを翻して歩き出した。


いつの間に現れたのか、金髪の青年が、数十メートル先の門の前でヴラドを待っていた。


 誰なのかよく分からなかったけれど、目が合うと、彼は恭しく頭を下げた。


 遠ざかっていく背中は、一滴の迷いさえ感じさせない堂々としたものだった。


 ヴラドが遠く感じる。


 ああ、この人は王なんだと、妙に納得してしまった。


 ヴラドは金髪の青年の元に着くと、二言三言言葉を交わして、私の方を振り返った。


 遠いから、ヴラドがどんな表情をしているかよく分からなかった。


 ただ、蒼い瞳が、夜の景色に妖しく光った。


 二人がマントを翻すと、冷たい夜風が空を舞い、枯れた落ち葉が二人を包むように巻きあがった。


 突然の強風で、一瞬目を離した隙に、二人の姿は忽然といなくなっていた。


 バドが深々と頭を下げている様子を見て、ああ、行ってしまったんだと実感が湧いた。


 もう、私に残されたことは祈ることしかない。


 ただ希望を胸に抱いて、強くなろうと心に誓った――
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