魅惑のヴァンパイア
「私じゃ、王の代役なんて数日持つかどうか……早く帰ってきてくださいね?」


 ルースカは不安そうな目でヴラドを見た。


「誰であろうと、ヴラド様の代わりをできる者などいません。どうか、必ず戻ってきてください」


 ラシードもいつになく真剣な表情でヴラドを見詰めた。


「……分かっている。必ず帰ると約束したからな。死界の支配者が、どんな奴か知らんが、どんなことをしてでも帰ってきてやるさ」


 ヴラドの瞳には自信と希望が漲っていた。


 ――なるほど、不安気に見えなかったのは、諦めているからではなく、生を信じているからなのか……。


 ラシードは改めて、ヴラドの器の大きさに感服した。


そしてまた、己自身も、希望を絶やさずこの人を信じようと心に誓った。


 ――この御方に賭けると決めたんだ。


この国の未来も、自分の命も、この御方に託そう。


例え、どんなに小さな希望でも、最後までヴラド様を信じ続けよう。


 ラシードは、心の隅で感じていた後ろめたさも、不安感も全てが希望に輝いていくのが分かった。


不思議と惹きつけられるヴラドの魅力の一端を垣間見たような気がした。
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