魅惑のヴァンパイア
「本当にあいつは、金に目ざとい女だぜ。……身体はいい女なんだけどな?」


 ピーターはニヤリと笑い、すぐに冷静な顔付きに戻った。


「あいつらが今まで静かだったのは、軍隊を統率するためだ。ぼやぼやしていたら信じられないほどの大軍隊に潰されるぞ」


 ピーターが最後に念を押した時、膝下まで届く、ミンクのコートを羽織ったシャオンが不安な顔をしながらパタパタと走ってきた。


「何を持っていけばいいのか分からなくて……」


「それだけでいいさ。さぁ早く出かけよう」


 外に出ると、冷たい北風が髪を揺らした。


「寒くはありませんか?」


「うん、大丈夫」


 バドが気遣うと、シャオンは不安気な顔をしながらも、しっかりとお腹を守っていた。
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