魅惑のヴァンパイア
風に揺られた木の葉が小さな台風のようにくるくると舞うと、オレンジ色のマントに包まれたピーターが姿を現した。


 目を大きく見開いて驚いているシャオンを尻目に、バドは食いかかるように尋ねた。


「どうでしたか!?」


「……この世の地獄だな。三六〇度信じられない数の軍隊と黒騎士団に包囲されている」


 黒騎士団とは、正規の軍隊ではなく、闇の力を操る暗躍組織だ。


黒いフードを被り、手足や顔もローブに隠され、意思もなく、命さえもないような、幽霊のような軍団のことである。


殺しのためだけに生き、血や肉を頬張る鬼畜。


 その大きな力に、ヴァンパイアでさえも一目見れば振るえあがる恐怖の生き物だ。


 黒騎士団の力をよく知っているだけに、バドは身を強張らせた。
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