魅惑のヴァンパイア
「あとどれくらいで彼らはここに到達しますか?」


「まもなくだ」


「まもなくと言うと?」


「……ほら、来た」


 前方から、黒い影がゆらゆらと動きながら顔を出した。


 地面から足を離れ、浮き上がった状態で黒騎士団は近付いてくる。


 そしてその後ろに海のように広がる、甲冑で身を固めた軍隊。


 幾多の修羅場を潜り抜けてきたバドでさえ、背中に冷たいものを感じていた。


「あ…あ…あ……」


 声にならない悲鳴をあげ、真っ青になっているシャオンを見て、ハッと我に返ったバドは、シャオンの手を取って、後ろに駆け出した。


 しかし数歩走ったところで、歩みが止まった。


なぜなら後ろからも、多くの軍隊の頭が見えたからだった。


「こりゃ終わったな」
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