魅惑のヴァンパイア
王が立ち上がり、怒りの声で大臣を静めた。


そして宴を強制的に終わらすと、わらわを召した。


何も驚くことはない。


わらわ達はこの為に宴に呼ばれたのだから。わらわは王の食後のデザートに選ばれたのである。


 わらわ達を宴に連れてきた大臣共は喜び、接待が成功したことに喜んだ。


 震える足で王の寝所に行くと、王は月明かりの下で微笑んでいた。


 宴で見た無愛想な顔とは雲泥の差だった。


 優しい瞳。鍛え上げられた肉体。


 この方になら食べられてもいいと思った。


  血も、身体も、命さえも奪われても恨むまい。


 わらわは月明かりの下で密かにそう思っていた。


 けれど王は、わらわの血を吸うどころか、指一本触れては来なかった。


 わらわを寝所に住まわせ、格別の待遇をした。


 毎晩王は、月明かりの下でわらわと話をし、歌をうたった。
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